SAVE THE CAT要点まとめ
1. 最高のログラインを作る
「ひとことで言うとどんな映画?」という質問に対する簡潔で魅力的な回答(ログライン)が作れるかどうかが重要。
映画会社に脚本を売り込めるか、映画会社の人が他のスタッフを引きつけることができるか、公開後に口コミが広まるか、全てに影響する。
魅力的なログラインには、以下の4つの要素が含まれている
- 皮肉があって、心が動く
- ログラインから映画の全体像が見える(イメージが広がる)
- 観客と製作費が分かる
- パンチが聞いていて、かつどんな映画かをきちんと表すタイトル
(例)
- 「新婚ホヤホヤのカップルが、離婚した親の元でクリスマスを過ごすことに...」- フォー・クリスマス
- (皮肉)クリスマスという一家団欒の状況のはずが大変なことになってしまう
- 「入社したての新入社員が週末に会社の研修にいくが、なぜか命を狙われる」- The Retreat
- (皮肉)歓迎されるはずの新入社員が、命を狙われる
- 「超安全志向の教師が理想の美女と結婚することになるが、その前に将来の義理の兄(警官)と最悪の相乗りをする羽目になる!!」- Ride Along
魅力的なログラインが完成するまでは、脚本を書き始めるべきではない。
2. どんなジャンルの作品を作ろうとしているか認識する
売れるハリウッド映画のジャンルは10種類。
おもしろい物語のルールやパターンをしっかり理解した上で、自分だけの一捻りを加えると良い作品になる。
「同じものだけど、違ったやつをくれ!」
自分が作ろうとしている作品はどのジャンルなのかを把握し、そのジャンルの作品を研究することが大切。
以下、10種類のジャンルの解説。
家のなかのモンスター
「あぶない!やつに食われるな!」というストーリー。逃げ場の無い空間にモンスターが現れる。モンスターにどんな新鮮味を作るかが脚本家の腕の見せ所。
- ジュラシック・パーク
- 13日の金曜日
金の羊毛
何かを求めて旅をするうちに、求めていたものより大切なものが手に入るストーリー。どれだけのことを成し遂げたかではなく、主人公がどう変化し、どう成長するかがおもしろさのキモ。
- スターウォーズ
- バック・トゥ・ザ・フューチャー
魔法のランプ
魔法やラッキーによって可哀想な主人公が幸せになる。最終的に「魔法で手に入れた贅沢な暮らしよりも、ささやかな幸せの方が重要だ」と気がつく話。
逆パターンで、ムカつく主人公が悲惨な目にあって、最後は元のような暮らしに戻れる、そしていいやつになる、という場合も
難題に直面した平凡な奴
どこにでもいそうな主人公が、とんでもない状況に巻き込まれる。平凡な主人公が勇気を振り絞ってがんばる。問題が大きいほど、悪役が悪いほど、主人公の行動が輝いて見える。
- タイタニック
- ターミネーター
人生の節目
思春期、結婚、離婚など、人生の節目に辛い経験をし、それを乗り越えて成長するストーリー。観客の共感を呼びやすい。
実は「家のなかのモンスター」と構成は似ている。モンスター(難題)が主人公に忍び寄り、その正体に徐々に気付き、受け入れる(乗り越える)ことで勝利をおさめる。
主人公の変化、成長も重要な要素。
バディとの友情
最初はお互いを嫌っているが、徐々にお互いの必要性がわかってくる、でもそれを認めたくない、喧嘩して離れ離れになる、離れてみて必要性を再確認し、仲良くなる。
友情だけでなく、ラブストーリーもここに含まれる。
なぜやったのか?
推理もの。事件の謎が暴かれる時、想像もしなかったような人間の邪悪性が明らかになる。観客は探偵が集めた情報をもとに自分でその真相を明らかにし、意外な結果に衝撃を受ける。
バカの勝利
一見負け犬に見えるバカな主人公が、権力のある悪者(体制側)に立ち向かい、勝利するストーリー。社会のアウトサイダーが勝利すると、観客は自分が勝利したような快感を味わう。
- フォレスト・ガンプ
組織のなかで
「俺とあいつら、どっちがイカれてるか?」という話。集団に対する忠誠を誓えば、時には常識を逸脱した行動をとったり、自分の命すら捧げざるを得ないときもある。
組織の新入りの視点から語られることが多い。(観客と主人公が同じ疑問を抱く仕組み)
- ゴッドファーザー
スーパーヒーロー
超人的な力をもつ主人公が、平凡な問題で悩まされる。「難題に直面した凡人」の対局のストーリー。主人公は人にはない才能を持つ一方で、理解されないつらさや苦しさを抱えている。観客は、誤解されたり周りから理解されないヒーローの苦しみに共感する。
4. 構成を考える
文章を書き始める前に、構成をガチガチに固める。
面白い映画の構成
以下のような構成になると良い。()内の数字は、前110ページの脚本のうちそのパートが何ページ目にくると良いか。
- オープニング・イメージ(1)
- 映画のスタイル、雰囲気、ジャンル、スケール等を伝える
- 主人公の出発地点を示す。
- ファイナルイメージとの差を明確にするためにも重要
- テーマの提示(5)
- 作品の教訓のようなものが登場人物の誰かの口から発せられる。
- 「お金より大切なのは家族でしょ?」
- 「奢れるものは久しからず」
- この時点で主人公はその意味をはっきり理解していない
- セットアップ(1~10)
- 冒頭の10分でメインストーリーに関わる全登場人物が紹介される。
- 主人公に必要なもの、かけているものもすべて見せる
- 直すべき六つのこと(6という数字に意味はない)
- きっかけ(12)
- セットアップで紹介された「使用前の」世界が壊れるできごとが起こる
- 悩みのとき(12~15)
- 「きっかけ」を受けた主人公が、行動をとるまでの悩みの期間
- 本当に自分にできるのか?
- 危険だけど思い切ってやった方が良いのか?
- 第一ターニングポイント(25)
- 主人公が行動に踏み切ることを決心する、何かが起こる
- 最終的に決心して、自信を持って前進する
- なんとなく成り行きで行動することになるのではなく、主人公が明確な意志を持つことが重要
- サブプロット、Bストーリー(30)
- ちょっとした場面転換、息抜き
- ラブストーリーなど
- ここで今まで出てこなかった新たな登場人物が出てくることも多い
- お楽しみ(30~55)
- 予告編で流されるような象徴的なシーンを入れる
- 作品の核心部
- ミッド・ポイント(55)
- 「すべてを失って」と対になるパート
- 主人公は(見せかけの)絶好超 or 絶不調のどちらかになる
- 迫り来る悪い奴ら(55~75)
- 敵が体勢を整えて、パワーアップして帰ってくる
- ミッドポイントで絶好調だった場合(絶不調なら逆)
- すべて失って(75)
- パワーアップした敵にやられて、絶不調になる
- 「死の気配」を入れると良い
- 枯れた植木鉢のような、死のモチーフでも良い
- 心の暗闇(75~85)
- 敗北したことにより、酷く落ち込む
- 長い場合も短い場合もある
- 第二ターニング・ポイント(85)
- サブプロットのできごとをきっかけに、解決策を見出す
- メインプロットとサブプロットの融合
- よくあるのは、主人公が好きな女の子の発言が、メインプロットの問題解決のヒントになるパターン
- フィナーレ(85~110)
- すべてのまとめ
- 主人公は教訓を学び、直すべき点が直り、メインプロットもサブプロットも勝利する
- 古い世界は新しい世界へ変わる
- 悪い奴らは一掃される
- ファイナル・イメージ(110)
- オープニングイメージとの変化を見せつける
- 最初友達がいなかったなら、最初と同じ場所で友達に囲まれているシーンなど
ボードを作る
上記の構成を4つのパートに分ける。
- パート1 (第一ターニングポイントまで)
- パート2 (ミッドポイントまで)
- パート3 (第二ターニングポイントまで)
- パート4 (フィナーレまで)
そしてボードを4分割し、思いついたアイデアを付箋でボードに貼っていくことで構成を考える。
各カードでどんな感情の変化(+/-)、どんな葛藤(>/<、何と何が対立してどちらが勝つか)があるかを書く
- ログラインとタイトル
- どのジャンルの映画か、そのジャンルの研究
- 魅力的な主人公
- 納得のいく構成がまとまったボード
すべてが出来上がって初めて脚本を書いていく。
脚本をよくするポイントTIPSいろいろ
脚本を動かす黄金のルール
SAVE THE CAT
主人公は、観客が出会ってすぐ好きになり、共感し、応援したくなることをしなければならない。
猫を助けるシーンでいいやつであることをアピールする、マヌケで無邪気な会話で好感を持たせる、敵をものすごく嫌なやつに仕立てて主人公を応援させる、など方法はなんでも良い。
プールで泳ぐローマ皇帝
不可欠だけど退屈になりがちな状況説明を、おもしろく処理すること。
退屈な説明に全く別の面白いことを混ぜる。
ある映画では、ローマ教皇がプールで泳ぐ映像の間に状況説明が終わるようになっている。観客が「え?ローマ教皇水着で泳いでるじゃん、帽子とるとこんな感じなのか、そもそもヴァチカンにプールなんてあったんだ」と思っている間に必要な情報をすべて伝えきる。
魔法は一回だけ
説明のつかない魔法のような現象は1回だけにする
UFOに乗って地球にやってきたエイリアンが吸血鬼に噛まれて「不死身のエイリアン」になった、なんてのはナシ。
観客は2回も魔法を信じない。「もうなんでもアリじゃん」ってなる。
パイプの置きすぎ
ストーリーの前提や状況説明が多すぎると、話の展開が遅すぎて観客はイライラしがち。
黒人の獣医(マジパン多すぎ)
アイデアは1回に1つだけ。詰め込みすぎるとよくわからなくなる。
「元軍人の黒人の獣医」みたいな設定とか。
基本的にはシンプルなほど良いので、良いアイデアがたくさん浮かんでも、なんでもかんでも採用しない
氷山、遠すぎ
危機の迫り方がノロすぎるとハラハラしない。
今そこにある危機じゃないといけない。
火山がそろそろ噴火しそうだ、ではドキドキしない。
変化の軌道
登場人物がどう変化するか、何がきっかけで変化するかの設計が大切。
良い物語では、悪役をのぞき、全員が何かしら変化する。
登場人物のすばらしい変化をみて、観客は自分も人生を変えたいと思うようになる。
マスコミは立ち入り禁止
マスコミが出てくると、「私たちだけの秘密」感がなくなってしまう。
国規模、地球規模の話じゃない限り、マスコミは登場させない。
例えば、「E.T.」がマスコミに取り上げられたら世界観が崩れてしまう。
作った脚本を改善するアイデア
主導権を握るのは主人公
主人公が行動力不足だと良い作品になりにくい。
状況に流されて行動してるだけだったり、動機が薄かったり、目的があいまいだったりすると作品の魅力は薄れる。
主人公は主体的に行動しないといけない。
- まず主人公の望み、目的を明確にする。
- 行動やセリフでそれらを繰り返す。
- 何をすべきか、主人公自身が考えている。苦労して自分自身で道を切り開く。
- 主人公は行動的で情熱的
- 主人公が何をすべきかを決め、他の登場人物がその答えを求める。逆はない。
セリフでプロットを語っていないか?
説明口調なセリフを避ける。
「もうあの頃とは違うんだ。俺がニューヨーク・ジャイアンツのフルバックでスターだった頃。あの事故が起きるまでは...」
アパートの壁に、選手時代の写真が飾ってある映像を見せた方がずっと良い。
語らず、見せる。
悪いやつはひたすら悪く
悪役が悪ければ悪いほど、乗り越えた主人公はデカい存在になる。
主人公に問題がないのに、なんだか感動がない時の問題は大抵これ。
回転、回転、回転
ダイヤモンドのいろんなカット面を見せるように、物語をいろんな側面から見せる。
物語が進むにつれて、登場人物の詳細や行動の理由、主人公の欺瞞や欠点、(悪役の)主人公が知らない恐ろしい力、邪悪な動機、最終兵器などがいろんなことが分かる。
また後半に進むにつれて物語の進行速度が加速していくことが大切。
カラフルな感情のジェットコースター
観客の、あらゆる種類の感情を呼び起こすと良い。
コメディでも、ただ笑いだけでなく、不安、憧れ、欲望、感動などいろんな感情を生む作品が良い。
「やあ、元気?」「うん、元気だよ」
魅力的な人物は、どこか人と違った話し方する。
セリフにより、登場人物の性格や過去、心の奥の本音や人生観を表現できる。
名前を隠しても誰が喋っているか分かるような状態が良い。
一歩戻って
冒頭で、変化する前の主人公の欠点や克服すべき課題がないといけない。
物語の進行と共に主人公が成長したり、状況がよくなることを描くためには、最初から完璧な状態ではいけない。
旅によって変化することがおもしろさを生む。
松葉杖と眼帯
登場人物が多かったりすると、印象の薄いキャラクターが出てきたり、キャラクターを区別できなくなることがある。
そんな時は登場人物に覚えやすい見た目の特徴(松葉杖と眼帯)をつけると良い。
原始人でもわかるか?
脇役やサブプロットがうまくいかない時も、この原則が役に立つ。
どの役でも人間らしく行動するためには原始的な動機で行動させる。
用語
コールバック
序盤で描かれた、登場人物の特徴、メタファーなどが後半で繰り返し描かれること。
序盤の伏線が後半の問題解決のカギになったり、同じようなシーンを描いて主人公の成長を強調したり、ジョークを強調したり、いろんな使い方がある。
繰り返しのモチーフ
コールバックとは目的が違う。
登場人物がレストランに行くたびに必ずコーヒーを注文するのを見ると、観客はなんだか嬉しくなる。自分もストーリーの一部だという感覚が強くなっていく。
直すべき6つの欠点
主人公が欠点や問題点を乗り越えることが、おもしろさのキモの1つなので、追加できる/すべき欠点がないか、探していく。
サブテクスト
シーンの奥に隠された本当の意味。
夫婦が離婚寸前を表したいとき、離婚を考えている様子を直接描くのではなく、「ちょっとした買い物で言い争いをしている」シーンを描いた方が、脚本に深みや厚みが出る。
テーゼ、アンチテーゼ、ジンテーゼ
テーゼ: 主人公の最初の世界
アンチテーゼ: 正反対の世界
ジンテーゼ: アンチテーゼの世界を乗り越えた後の世界